
フロン点検制度は、業務用の空調機器や冷凍冷蔵機器などのフロン使用機器を対象とした法定点検制度です。この制度は、フロンの漏えいを早期に発見し、環境への影響を最小限に抑えることを目的としています。点検には、簡易点検と定期点検の2種類があり、機器の規模や用途によって実施頻度が定められています。また、点検の実施者には、一定の知識と技術が求められ、特に定期点検は資格を持った専門技術者が行う必要があります。
【具体例】
冷凍能力が7.5kW以上の業務用エアコンを使用している飲食店の場合、これまでは4年に1回の定期点検が必要でしたが、新制度では3年に1回の点検が義務付けられます。
2. 3年に1回の点検義務が始まる2025年4月からの変更点
2025年4月からの新制度では、これまでの4年に1回の定期点検が3年に1回に短縮されます。この変更は、フロン漏えいの早期発見をより確実にするための措置です。対象となる機器の範囲も拡大され、これまで点検義務のなかった一部の小規模機器も新たに点検対象となります。また、点検記録の保管期間が延長され、より厳格な管理体制が求められることになります。重要なのは、この変更に向けて事業者が計画的に準備を進める必要があることです。
【具体例】
スーパーマーケットの場合、店舗内の冷凍・冷蔵ショーケース(合計出力50kW以上)について、これまでは4年に1回だった定期点検が3年に1回となり、年間の点検費用や管理体制の見直しが必要になります。
3. 事業者が取り組むべき対応と準備事項
事業者は、フロン排出抑制法に基づく定期点検の義務化に向けて、具体的な準備と対応が必要です。まず、社内の管理体制を整備し、フロン点検の責任者を選任する必要があります。点検対象機器の台帳整備も重要で、機器の設置場所、型式、冷媒の種類、充填量などを正確に記録します。また、第一種フロン類充填回収業者との連携体制を構築し、点検スケジュールを策定することが求められます。特に、7.5kW以上の機器については、専門知識を有する者による点検が必要となるため、有資格者の確保や外部委託の検討も必要です。さらに、点検記録の保管体制を整え、3年間の保存義務に対応できるようにしなければなりません。
具体例:
・空調設備10台を保有する小売店舗の場合、年間点検計画表を作成し、各機器の点検時期を分散させて計画的に実施
・冷凍冷蔵設備を使用する食品工場では、設備管理部門に専門の点検担当者を配置し、日常点検と定期点検を体系化
法改正に伴うフロン点検の強化は、地球環境保護と機器の効率的な運用の両面で重要な意味を持ちます。事業者は、自社の設備状況を把握し、計画的な点検実施体制を構築することが不可欠です。また、専門業者との連携を深め、確実な点検と記録の保管を行うことで、法令遵守と環境負荷低減を実現できます。コスト面では初期の体制整備に投資が必要となりますが、これは設備の長寿命化やエネルギー効率の向上にもつながる重要な取り組みと捉えるべきでしょう。中長期的な視点で、計画的な対応を進めることが推奨されます。今後は、より厳格な環境規制が予想されるため、この機会に確実な管理体制を確立することが賢明です。